1991年のソ連崩壊から世界は大きく変わりました。それまでは各国共軍事力の向上に注力し、生活用品が不足。造れば売れた所謂メーカー主導のマーケットであり、私たち商社も代理店・特約店として一定の手数料を頂けていました。しかし21世紀は自由経済の時代です。メーカー主導から消費者主導に移り、また消費者も個性化・多様化し、10人10色、100人100色、つまり顧客から個客へと変わっていきました。
 こうなれば私たちの仕事も、仕入れた製品を小売店に流すといったこれまでと同じ事をしておれば生き残れないでしょう。大きく業態を変えなくてはなりません。小売の方向へ移行するのか、物流機能を特化させるのか。しかし私たちに小売マーケティングのノウハウはなく、また物流機能への特化は多大な投資と少リターンというリスクがあります。
 そこで私たちが選んだ道は川上、すなわち「開発型企業」への転換です。これまでの競争相手にお客様になって頂く、そんな観点からの開発型企業です。そして私たちが開発していくものは、決して商品だけではありません。商品に加えて、サービスの開発、システムの開発。この3つの開発を新しい業態として取り組んでいくことが私たちの開発型企業としての考え方なのです。
  以前はいいものを創るというのが差別化の基本であり、その牽引役がITです。情報革命によって、例えば商品を造る上でどこの国の資源がいいのか、どこで造ればコストが安いのか、どこの国でマーケットがあるのか、などが瞬時に分かるようになり、これによって差別化が図れていました。
 しかしこれからは、逆にITが進化しているからこそ差別化が難しくなっています。差別化のポイントであった世界の情報が、万人に瞬時にして入るわけですから、その情報に対応していたのでは差別化になりません。優れた技術もあっという間に真似され、それ以上に優れた機能性能を持って、さらに安いといった商品がすぐに出てくるのです。「イイモノ」つまり商品だけで差別化できる期間、即ちライフサイクルがとても短くなりました。
 では何で差別化するのか。まず高品質の商品、それに加えて他社に真似のできないサービス、そしてそれらを実践・継続できるスピーディな仕組みづくりが必要です。それら3つを基本とした企業としての総合力で差別化する、言うなればこれも「ブランド」と言っていいでしょう。商品やサービスを通じて私たちの企業ブランドを認知して頂き、触れ合って頂く。これがこれからの差別化ではないかと考えております。

 
  サービスというのは、言いかえればお客様に喜びをご提供することでしょう。例えば子供の頃なら、何かを貰った喜び、これまで出来なかったことが出来た喜び。これらを思い返して、お客様に喜びをご提供することが自分の喜びと感じること。これが第一だと思います。そして第二はお客様のことをよく知ること。私たちの最終目標はユーザー様の生活向上ですが、お客様である小売店はユーザー様と最も接しておられます。そのお客様の声をしっかりと聞いて喜びを提供していくためのシナリオを描く。これらがサービスを行う基本となるでしょう。
 そしてサービスにも段階があります。まずはどこでもやっている通常の顧客サービス。次の段階は提供側が工夫しイレギュラーなことが発生した場合にも機転をきかせて行う顧客満足のためのサービス。しかしCSという言葉が氾濫して各社大変な勢いで競争しており、新しい顧客満足もすぐに陳腐化してしまうでしょう。
 私たちは顧客満足から「個客感動」を生むサービスをご提供したいと思っています。これまで培ってきたノウハウを様々な角度から分析して、お客様やユーザー様から「こんなことまでしてくれるのか」と感じて頂くようなサービスを開発し、初心に返ってご提供していきたいと考えています。

 
今リストラによって業績が回復した企業が多いようですが、開発も差別化もサービスも実践するのは全て「人」。「人」が宝です。私たちが開発型企業として生き残っていくには様々な人材が必要です。開発するプロデューサー、企画するプランナー、表現するデザイナー、提案する営業マン、そして外部のパートナーの方々・・・。
 私はそれらの人々に常に変化を求めています。意識の改革ではありません。行動の改革です。先に行動を起こせば失敗もあります。しかしその失敗を成功に繋げるシナリオを描き、それに挑戦する行動こそが大きな成果に繋がり、その人材の成長にもなるでしょう。大切なことは結果ではなく、自分も上司も、描いたシナリオの「プロセス」を絶えず軌道修正して挑戦し続けることです。
 私は常にリーダーに対して自分の部署の利害だけを考えないで会社全体の立場を考えること、と言っています。そうでなければ行動範囲を狭くし、他の部署から不平不満も出てくるでしょう。大きな視点で物事を捉え「世界のネットワークを通じて環境に優しく、安全と豊かなカーライフを創造して社会に貢献する」という理念を実行できる「人」づくりをしていきたいと考えています。それにはまず「トップから変わる」ということを心がけています。
  先程の企業理念そのものがビジョンであり、またこのインタビューでお聞きになった開発型企業、差別化、サービスなどを実践・継続していくのもビジョンを具体化する方向を示しています。そしてそれらを実行するのはやはり「人」。人の行動です。経験豊かな人や知識のある人は実行の前に考えてしまう。机に座って考えている間は問題も起こらないし、リスクも生じません。行動して初めて体験する問題点に対していかに解決していくかのシナリオを描く、これが仮説であって、その検証を繰り返すことが挑戦でしょう。その問題点や失敗を成功に導くことが楽しいと感じる人が大切です。行き着くところ、中央のビジョンを共有して、挑戦できる「人づくり」が最も肝要であると感じています。
 全体を要約すれば、ユーザー様の生活向上を通じて感動をご提供し、ニッチな分野であってもオンリーワンとなること。そうすることによって企業ブランドの価値を認識頂き、会社を発展させ、社会への貢献、株主の皆様への配当、そして実行してくれた社員にはその生活向上へ還元する、と言うことになります。
 私はよく「あなたの給料は誰から戴いているのか」と聞きます。今「社長から貰っています」と応える社員はいません。なぜならお客様に喜んで頂いたことによるお客様からの報酬なのですから。
 変化と競争が激しい時代。トップが危機感を持ち、自ら行動し、お客様やユーザー様はもちろん、社員にも感動を与えられる企業を目指していきます。